m08029「さよなら。いつかわかること」 誇りを失ったアメリカ・ミドルの苦悶と迷い ★★


ジェームズ・C・ストラウスの「さよなら。いつかわかること」。 

米兵としてイラク戦争に従軍した妻が戦士したことを、娘たちにどのように伝えればいいのか思い悩む父親の話ときけば、感動のストーリーだと思っていたのだが、この映画は意図的なのか、あるいはそうでないのか定かではないけれど、アメリカのミドルの行き場のなくなった空虚感を描いている。

この映画の主人公は、仲間と毎朝掛声をかけて仕事をしているホームセンターで働いているのだが、米兵になりたくてなったのに近視がもとで辞めさせられているから、希望が半ばない。誰でも代わりがきくような仕事をしている。
弟はもっと大変、30代になって定職をもたず、医師か弁護士を目指して大学に入りなおすなどと言っている。
政治に対しても希望がなく、だけどメディアがしきりと意味のない戦争だとあおっているイラク戦争については、妻が従軍しているために意味のあるものだと信じなければやっていられない。

妻がなくなって、それがうまく伝えられずに、子供に行きたいところを聞けば、フロリダのテーマパーク。

この帰ってこない妻が象徴しているものは、実はアメリカの誇りというものだったのかもしれない。
アメリカの誇りはイラクを境にあやしくなっている。そこにサブプライムが追い打ちをかけて、生活のレベルすらあやしくなり始めているのがアメリカの現状なのかもしれない。
そして、未来を象徴している子供たちに明るい未来を語ることができない。見せることができるのは虚構だけ。

なんとも哀しい映画である。
| 映画| 23:10 | comments(0) | trackbacks(0) |

m08028「ダージリン急行」 小気味よいインド列車旅 ★★★


飯田橋でウェス・アンダーソンの「ダージリン急行」

テンポのいい痛快なロードムービー。
欧米文化を身にまとった兄弟3人がはちゃめちゃな列車旅をするのだが、それでいながら旅するインドの文化が迫ってくる。
音楽の使い方や、画面の構図、展開の小気味よさ。
兄弟3人の個性がそれぞれ違って面白い。
エイドリアン・ブロディは品があってよい俳優ですね。
| 映画| 20:59 | comments(0) | trackbacks(0) |

b08064「日本人の精神と資本主義の倫理」 大衆化の蔓延に対抗するために ☆☆
日本人の精神と資本主義の倫理 (幻冬舎新書 は 3-1)
日本人の精神と資本主義の倫理 (幻冬舎新書 は 3-1)
波頭 亮,茂木 健一郎

タイトルはマックス・ウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」と重ね合わせている。ウェーバーは、プロテスタントの諸国における「いかに生きるか」という倫理観と、資本主義という社会制度の成立がいかに深くかかわったかを論じ、この本では日本の固有の倫理観とみあった経済と社会システムがあるはずなのに、それが曇ってしまっているのではないかという命題がこの二人の話の根底にあるようだ。

冒頭の話がおもしろい。

日本が欧米と異なっている点として、お金儲けの大局にある対抗軸である寄付の精神が欠けていることをお二人は嘆いている。極めて、自己本位、利己的で、自分さえよければよい、金はかせげばよい的な精神が日本人の中に内在しているという。
その理由を宗教に求めている。日本には、喜捨的な宗教の精神が宿っていないのだろうか、と考えると、仏教にはそうした精神があるから、むしろそれが日本人の血や骨になっていない、あるいはどこか(戦後?)で忘れてしまったという仮定もおけそうだ。

あと、日本人の大衆性についても嘆いている。下へ引っ張るピアプレッシャーが日本人の中にはあり、高いレベルのものを低いレベルに落とし込むことによって成立している。
僕が思うに、それは貴族社会のような階級が崩壊しているからだろうと思う。漱石の描く明治初期には明らかに階級が存在していて、人々の間にレベルの差がある。
戦後は全国民をすべて同じレベルにするような社会主義的な発想でやってきたから、すべてが大衆化してしまったのだろう。
お金をもっていても、結局は成金であって、そういう人たちは漱石の小説にも出てくるが文化を深く理解していることなどないわけだ。

しかし、戦後の民主化が今のような状況を招いている一因だとすると、これは難しい話ですね。結局、茂木さんたちが語っているように、大衆化とは違う軸を見出すしかないですね。茂木さんはスローライフやロハスというのが対抗軸として出ているが弱いと考えている。確かにそうだろうが、教養のある人がそうしたスローライフやロハスという軸で物事の価値観を形成していくことで、ここに出てきた問題もかなり解決ができていくように思うよ。
消費文化(大量消費→退廃的?消費)軸に対して、高質文化軸のような軸がね。そこでは日本人が備えているミニマリズムの精神も生きてくるように思う。いずれにしても、今後経済成長に期待ができない日本では、新しい価値観を根付かせておかないといけないのだと思うよ。

| 読書(その他)| 11:39 | comments(0) | trackbacks(0) |

おつかれさんな一週間
今週は乗り越えるのがきつかった。
金曜日に大学院の設置準備委員会が3つあって全ての庶務を担当していたのと、文部科学省への大学院設置申請の対応が結構大きかったからだ。
今日は朝から睡眠削って少し麻痺したような頭で管理会計の授業。
火曜のファイナンスの授業であまりに消極的すぎたから、今日は相当手を挙げて発言しました。たぶん、発言数が一番だったと思う。
たいした発言じゃなくても、授業にかかわりをもつことで、授業が自分にすごく意味のあるものに変わるんだと思う。
授業後に文部科学省でシンポジウム聞いてきた。

さすがに終わった後はどうしようもないくらいにくったり。
家帰って、アジのお刺身食べながら、白ワイン飲んで、ノラの声を聴いています。
脳神経のニューロンがショート気味なので、今夜はさっさと寝ようと思います。
| 日々の泡| 20:13 | comments(0) | trackbacks(0) |

授業の反省と近況
今日の大学院の授業、自分の準備がいまひとつ。
予習が表面をなぞってとりあえずやった的なものだったし、積極性にも欠けていて、発言0。(発言点があるのです。)

どうも仕事が遅くなって、予習ができなくなって関連本も読めない、みたいな悪循環に陥り始めているかもしれない。
どうにか立て直さなくては。

明日は東大と文部科学省に詣でます。



・・・それから日曜日の日、今年も池上本門寺のslow music slow liveに弟と行ってきたのでした。あいにくの雨だったけれど、アン・サリーをはじめとして、素晴らしかったです。
ただ、降り続く雨が野外ライブではマイナスに働いて、ちょっと恨めしかったです。
| 日々の泡| 00:40 | comments(0) | trackbacks(0) |

昔のアルバム開いて、そこで動けなくなるような、そんな気分
今週は大学で一番働いたよ。
部長はあんまりこんつめないでね。と心配そうに帰っていく。
みんなそんなふうに、あまり頑張りすぎないようにね、って言って帰っていく。
何だか恵まれているなって思うわけ。

くるりの「ばらの花」聴いてると仙台のこと思い出す。
線路から脱線しそうな気分で、あぁこのままどうなっちゃうんだろうなって思ってた、そんな日々のこと。そして、きっぱりメールで退職願出しちゃったこと。東北大の農学部のまわりを歩いて、夜道、いろいろ考えていたこと。

夜になると昔のこと思い出してる。
夜風が涼しくなってきたからかな。

| 日々の泡| 01:04 | comments(0) | trackbacks(0) |

詰め込まれたお昼と回顧主義な夜
仕事がいっぱいいっぱい。
まだ、休み明けで繁忙期でもないのにね。
大学院が設置ラッシュで、薬学に看護に環境に・・・という具合でこの1,2年で開設予定のものを5つ手がけている。助産師について調べて、専門看護師について調べて、自殺率について調べて、ジェネリック医薬品について調べて、・・・そして、書いて説明して書いて説明して、みたいな感じなのです。どれも文部科学省が関係しているので、提出書類に細かな形式があって、それに合わせるだけで一苦労って感じです。毎晩、帰宅時には誰もいなくなっていて、大学は真っ暗です。

今は、youtubeで懐かしきフリッパーズギターやらザバダックなんて聴いてます。あぁお眠り前のちょこ回顧主義。

| 日々の泡| 01:11 | comments(0) | trackbacks(0) |

m08027「敵こそ、我が友 戦犯クラウス・バルビーの3つの人生」 戦争犯罪人まで利用する大国の浅ましさ ★


銀座でケヴィン・マクドナルドの「敵こそ、我が友 戦犯クラウス・バルビーの3つの人生」

ナチスでのユダヤ人迫害やフランス・レジスタンス迫害をしたクラウス・バルビーが、戦後裁かれることなく、アメリカに利用される形で、ボリビアに渡って、軍事政権の支援にまわっていくという人生を描いた作品。

バルビーの拷問等でみせる残虐性に、たとえ戦時のことであったとしても、酌量の余地はないと思うが、それを共産主義への対抗のために利用しようとする大国の考え方が浅ましい。

ドキュメンタリー映画だったせいもあって、今朝の授業の予習に睡眠を削ってしまっていた僕には、脳が覚醒できずにあまり楽しめなかったかな。(これは映画ではなくて、僕のせいのような気もするけど。)
| 映画| 22:40 | comments(0) | trackbacks(0) |

b08063「裸でも生きる」 思いが強ければ、どこでだって前進できる ☆☆
裸でも生きる――25歳女性起業家の号泣戦記 (講談社BIZ) (講談社BIZ)
裸でも生きる――25歳女性起業家の号泣戦記 (講談社BIZ) (講談社BIZ)
山口 絵理子

山口さんはバングラディッシュでバッグ生産を行う「マザーハウス」代表をしている社会起業家です。
今夜、大学院で行われる山口さんの講演会を聞きに行くので、その前に著作を読んでみました。

なんともすごい根性の持ち主であり、20代にもかかわらず、ここまでの生き方がとても濃いです。
ふつうはもっと効率よく楽な道を選びながら生きていくものだと思うけれど、山口さんは思い立ったら、どんなところでもかき分けて進んでいきます。
そうしたやり方で結果を出しているのもすごいし、人間、強い思いと気力があれば、物事をなしえることができるのだなぁと思います。

社会起業家ということで、読む前は既に実績があって、安定しているのかと思いきや、様々な困難は過去の話ではなく、現在進行形でここにあるという感じです。
行動していかなっきゃ、何も始まらないという感じです。

兎にも角にも、今夜の講演会が楽しみです。


↓マザーハウスのHP
http://www.mother-house.jp/index.php

↓山口さんのブログ
http://www.mother-house.jp/ceo/




講演会行ってきました。
やはり直接話を伺ったことで、山口さんのもつ人となりが伝わってきてよかったです。相当、芯の強い人だと感じました。
山口さんは、「自分」をもっていることが人に勝っていることだとおっしゃっていました。「自分」はぶれることがないし、「自分」がすべての源泉であり、「自分」に嘘はつかない、とのことでした。

マザーハウスも順調に大きくなっているようで、今後は生産と販売のグローバル展開に乗り出すそうです。
その中で以下にマザーハウスの精神(ストーリー)を伝えていくかが重要であり、人をどうやって育成していくかが鍵となるようでした。
人を見るときには、山口さんは「人間力」(=人を引き付けるオーラ。まったく知らない人たちを巻き込んでいけるか。)が重要であり、山口さん自身はそういったものを見分けられるようになったとのことでした。
また、リブランディングも起こりえるし、起こしていく必要があるだろうということを言っていました。あくまでマザーハウスはコンセプト・ブランドであるので、デザインが変わっていくことはむしろ大事なことだということでした。
今後は現地が独立していけるようにしていくことも課題のようです。

今後もぜひがんばっていただきたいなと思いました。

僕も行動できるように一歩でも二歩でも準備を進めていきたいです。
| 読書(社会起業家)| 15:27 | comments(0) | trackbacks(0) |

m08026「ジェイン・オースティンの読書会」 語り合う中で相互理解は進む ★★


飯田橋の二本目は、ロビン・スウィコードの「ジェイン・オースティンの読書会」

読書会を通じて、オースティンの小説を深く読み込んでいくことで、そこに参加する人たちの人生が少しずつ好転していくというストーリー。
オースティンはこれまで読んだことがなくて、映画で「高慢と偏見」と「エマ」(内容は忘却の彼方)を観たくらいだったから、映画の中の軽妙なやりとりをすべて理解することができなかった。また、アメリカ人にとってはかなり重要な作家なのだとも理解できた。
日本人にとっての漱石とか村上春樹くらいの重みがあるのかしら(・・といっても読書会なんてする人はいないけど。)

アメリカ人はあるものをシェアして話し合うことが好きな人種なんだろうと思う。
誰かが問題をもっていれば、それを外に出して、話し合う中で解決していくということを好む。
この映画は小説のことを語り合っているようにみせて、実は各自の人生における問題を語り合っている。

語り合うことで、お互いの理解が進み、好転していくというのはなんともよいことですね。
読書会という形態はなかなか面白そうなのでいつかやってみたいですね。それこそ村上春樹さんの本なんかで。
オースティンもいずれ読んでいきたいと思います。
| 映画| 15:09 | comments(0) | trackbacks(0) |
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